『ネコを撮る』 岩合光昭 朝日新書33
ネコを撮る (朝日新書 33) 岩合 光昭 朝日新聞社 2007-03-13 売り上げランキング : 190121
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外を歩いていているとノラ猫に遭遇する。友達のうちに遊びに行くと、そこにネコがいる。ネコという動物を見ると、その動きやフォルムに魅了されてついついカメラを向けたくなる。しかしなかなかうまく撮れなかったりするのが残念です。
本書のタイトルは、『ネコを撮る』。
文字通り、ネコを撮るためのマニュアル・・・と言いたいところなのだけれど、しかし本書には、絞りがどうとか、ホワイトバランスがどうとか、そういうカメラの操作の仕方に関するお話しはありません。たぶんそれだと、ただのカメラの操作本になってしまうし、そういった本は趣味コーナーにあるカメラ本で十分だ。
そこでやはりここは、動物写真家であり、ネコ写真の第一人者である岩合さんの本であるからして、そんなカメラの使い方と言ったつまらないお話しではありません。ところどころ挿入されている写真の欄外に、望遠レンズを使うとか、広角レンズを使うとか、いくつかあるにはあるけれど、ほんのちょっとしかありません。あくまでメインは、ネコの写真を撮るための作法のようなもの。例えば朝早く出かけようとか、動きをよく観察しようとか、そうったアドバイス。しかしそのアドバイスも早々に切り上げて、各国のネコ事情や、ライオンやチーターと言ったネコ科の動物の特徴が述べられていき、“ネコ写真”からは遠くなっていく・・・。
普通であればここでタイトルと中身が違うではないかと文句の一つも言いたくなるのだが、しかしここは被写体がネコであるし、木訥とした岩合さんの語りでもあるし、そんな文句は一つも出てこないのが不思議。
岩合さんのネコに対するやさしい視点。そして、ネコの世界に溶け込んで写真を撮ることこそが、ネコ写真の秘訣であることを知る一冊。ところどころに挿入されるネコ写真もおもしろく、あっという間に読み切ることが出来ますので、頭を働かせずにのんびり活字に浸りたい時にもおすすめです。