『「大発見」の思考法』 山中伸弥・益川敏英著 文春新書
「大発見」の思考法 (文春新書) 山中 伸弥,益川 敏英 文藝春秋 2011-01-19 売り上げランキング : 28990
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ここ数年日本人のノーベル賞受賞者も着実に増えているように思います。これも全ては湯川秀樹氏の日本人初のノーベル賞受賞からはじまり、そこから積み重ねてきた基礎研究の成果なのかと思うと、「知」の向上が持つ意義を改めて考えてみたくなります。
本書は、iPS細胞でお馴染みの山中伸弥教授と、素粒子の研究者である益川敏英教授の対談です。研究の場からは遠い一般の人々にとって、益川敏英教授の素粒子のことはちんぷんかんぷんという方も多いと思います(私もそうですが・・・)。一方で、iPS細胞の方は、私たちの身体の話しであり、また、もしかしたら病気の解決方法につながるのではという期待もあるためか、直感的に分りやすく、興味も持ちやすいところがあります。その印象をそのまま反映したわけではないとは思いますが、本書の対談は、好奇心旺盛な益川敏英教授が山中伸弥教授をリードする形で進んでいきます。
山中伸弥教授、益川敏英教授の両者がどのように生まれ育ち、そして学んできたか。そういった生い立ちの話しもしながら、話題は深いところに進んでいきます。
タイトルには「大発見の思考法」とありますが、そこまで大げさな内容ではなく、そこに至るまでの人生プロセスや学問への姿勢、これからの学問の発展に向けてといった大局で観た研究姿勢といったところでしょうか。
惜しむらくは、両者のフリートークに任せるのではなく、科学に精通した人を司会にして、話しをうまく進行してもらえたらもう少し深いところまで入っていったのではないかと思います。かつて、湯川秀樹氏と梅棹忠夫氏による『人間にとって科学とはなにか (中公新書 132)』という名著がありましたが、こちらはもっと深くスリリングな内容になっていました。両者の生い立ちなどはこの際省き、より科学、思考、学問といったものに肉薄してもらえたら、タイトル近い内容になったのではと思います。続編のようなものがあったらいいなと思います。
すでにこういった研究者の世界に足を踏み入れている方にとっては、両者の対談は奮起を促してくれると思います。また、これから先どのような学問をしていこうか悩んでいる学生の方にも、いい思考のきっかけになるのではないでしょうか。
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