『水玉の履歴書』 草間彌生著 集英社新書 0692
表参道ヒルズがオープンする頃、たまたまプレオープンチケットがあったので、物見遊山で表参道ヒルズに行ったことがありました。表参道ヒルズのメインの建物の隣には、かつてそこに建っていた同潤会アパートを復元した棟があります。そこにはアートショップが入っているのですが、そこにも足を運んでみました。すると、部屋に入る前から何かモワッとした強いエネルギー体の存在を感じるのでありました。何だろう、何だろうと首を伸ばしてみてみると、何とそこには草間彌生氏本人がイスに座っておりました。正直その時わたしは草間彌生氏のことを全くといって良いほど知らなかったため、そのエネルギーに圧倒されて帰ってきた憶えがあり、今でもそのインパクトは身体に残っているように思います。
本書は、水玉模様のアートでお馴染みの草間彌生氏の著書。生まれた頃のお話しや、その後の活動について、印象的な言葉で草間彌生ワールドを語っています。
“草間彌生”という類い希なる才能がどう産まれたか、そんなところにももちろん興味があるわけですが、それよりも何よりも、未だに現役のアーティストとして活動をしているというところがすごいところであります。たいていの場合、アーティストには旬のようなものがあり、ある程度の所からは過去の作品で生きている人も少なくありません。しかし草間彌生氏は、未だに創作意欲をメラメラとたぎらせ、そして未だに前進し続けているのです。
水玉というと、どことなくガーリーな感じもしないでもありませんが、そこには草間彌生氏が到達した大きな哲学が籠もっており、繊細で、大胆で、再生であり、様々な意味合いを包括しながらその世界は拡がっていきます。
本書を読むと、草間彌生氏のパワーをひしひしと感じることができます。そしてそのパワーは、普通に生活する人々にとっても、大きな助言となるのではないかと思います。本書は、すぐに読めます。そして、すぐに元気になります。これほど即効性のある新書は、最近ではとても珍しいのではないでしょうか。
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