『人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」』 三井誠著 講談社現代新書
鍼灸師として人の身体を診ていると、ほんとうに身体というのは過不足ないものだと感心することが多く、いったい誰がこの「人」というものを作り上げたのだろうと思うことがあります。そして、その進化の道程に思いを馳せると、いろいろなことを想像してワクワクしてきます。
鍼灸師という自分の仕事にとっても、この人類の進化の歴史を解明できたら、もっと良い治療に結びつくのではないかと思ったりもして、それがためにさらにワクワクしながらこういった人類史の本を読んでしまいます。
本書は、主に人類がどのようにして人類という種に辿り着いてきたのかという道のりを中心に語られています。
こういった人類史の本でありがちなのは、ややこしいカタカナの人類の名前が次から次へと出てくること。もちろんそれは学問的に大切なことで、そういった細かい情報を求めている方もいるでしょうから、それはそれで必要なことかも知れません。しかし、私のような、直接人類史そのものを専攻にしていない者にとっては、それほど重要なものではなく、出来たらサラッと流していきたいところです。本書はその案配がとてもほどよく、一般の人が手にとっても無理なく読み進めることが出来るのがすごいところ。
本書によると、700万年前に、はじめて人類と呼べるような萌芽が産まれたそうなのですが、その後は紆余曲折、相当の時間をかけて進化の道を歩んでいき、そして現生人類となってからは、それまでとは打って変わって急激な(といっても地球の長い歴史から見ての尺度であって、何万年という年月が必要であったことはわけですが)進歩をとげていく。そして日本でいえば、縄文時代のような、痕跡が残っている、手に届きそうな時代になったという・・・その変化の仕方がまた読んでいて楽しいです。
700万年という長い年月を、この新書という1冊にまとめるというのは至難の業であると思いますが、単なる形態の変化だけではなく、精神文化の面からの進化の足跡もある程度はカバーしているのも面白く読むことが出来ます。
そして、日本人のルーツについても一つの章を作り、さらに、人類史が今現在どういった手法を用いて人類進化の謎を解き明かそうとしているのかといった技術的なお話しもあって、それはそれでまた興味深く読むことが出来ます。
2005年に刊行された本なので、その後の新しい発見や発掘によって、本書の内容が変わってきている可能性もありますが、それはそれとしても、これほどまでにコンパクトに、そしてときにユーモアを交えて読むことが出来るのは貴重な一冊ではないかと思います。人類の進化、人類史に興味のある方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」 (講談社現代新書)
- 作者: 三井誠
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/01/22
- メディア: Kindle版
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