『スポーツを考える 身体・資本・ナショナリズム』 多木浩二 ちくま新書
バルセロナに所属し、スペイン代表でも活躍してきたイニエスタが、なんと日本のJリーグにやってきました。これは本当にすごいことです。真面目なイニエスタが日本に数年でも定着してくれたら、日本のサッカーはだいぶ変わるかもしれない、それくらい大きな期待があります。年俸も推定で33億円と言いますから、その期待度の高さも分ります。
そんな華々しいスポーツの話題がある一方で、日大アメフトの問題はある意味スポーツの負の面が露呈しているのかもしれません。
2020年には東京にオリンピックがやってきますが、建設中の国利競技場を観に行くと、ほんとに巨大で、これをどうやって維持していくのだろうと思います。
スポーツは感動も与えてくれますが、その一方で様々な利権が渦巻いたり、移籍金の巨大さには驚くばかりで、いったいスポーツというのは何を意味しているのだろう?と、貧しい人々の姿を見ると、ふと思ったりもします。
誰のためのスポーツ?
何のためのスポーツ?
どこからやってきて、どこへ向かおうとしているのか、スポーツ?
ということで、本書は、記号論で世の中を読み解く思想家。
スポーツの華々しい部分だけにスポットを当ててお茶を濁すのではなく、そもそもスポーツはどこから始まったのか、そしてどんな歴史があったのか。そういった現象の背後にある意味を紐解いていきます。
本書を読む人のなかには、本書を批判的に捉える人もいると思います。しかし、これだけ巨大な利権が動き、ある面では犠牲になっている人もいることを思うと、そもそもスポーツって何だろうと考えておく必要はあるのではないでしょうか。
【その他の関連新書】
スポーツを考える―身体・資本・ナショナリズム (ちくま新書)
- 作者: 多木浩二
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1995/10/01
- メディア: 新書
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『プロフェッショナル原論』 波頭亮著 ちくま新書
著者は、長年コンサルタント業に携わった方。その経験から、「プロフェッショナルとは何か?」という問いに対して、丁寧に考察を重ねていった一冊。
具体的な方法論は少ない気もしますが、“プロフェッショナル”と呼ばれるための生き方の指針、大まかな意気込みなどはとても参考になるところが多いです。
これから社会に出て行く方や、ビジネスマン・職業人として伸び悩んでいる方にとっては、言い視点を与えてくれるのではないでしょうか。
【その他の関連新書】
『すりへらない心をつくるシンプルな習慣』 心屋仁之助著 朝日新書
テレビでもお馴染みの心屋仁之助氏の本。
とにかく、とかくこの世は世知辛く見えてしまう。
真面目な人ほどばかを見る。
何だかなぁの毎日。
そうしているうちに、どんどん心はすり減っていく。
うつとか、新型うつとか、そういうことではなく、今の社会はすり減り社会なのだ。
ということで、本書を通して、すり減らない心とはどんなものを指すのか、ちょっとばかりヒントをもらうのは悪くない気がする。
【その他関連新書】
『江戸の思想史 人物・方法・連環』 田尻祐一郎著 中公新書
著者 田尻祐一郎
発行 中公新書
価格 800円(本体)
お薦め度 ☆☆☆☆
本書を読むと、江戸時代はとても文化的に豊かな時代であったことを知ることができる。江戸時代の思想をリードした人物に、医家出身が多いと言う一文が印象的である。
太平の世を謳歌した江戸時代、東洋哲学・東洋思想の分野において、日本は独特な展開を見せました。儒教、朱子学といった基本的な学問をベースにしながらも、それぞれが独自の解釈を施し、とても多岐に渡る拡がりを見せました。
本書は、江戸時代の特徴的な東洋哲学を見事にコンパクトにまとめた好著であります。
【その他の関連新書】
『よくわかる、こどもの医学』 金子光延著 集英社新書
清朝時代に編纂された古医書に『医宗金鑑』というものがあります。この本の中に小児に関する病気とその処方をまとめた巻がありますが、その冒頭を意訳してみると、「赤ちゃんは症状を訴えることが出来ないので治療がとても難しい。そこでしっかりと診断する方法を身につけるべきである。」と書かれています。
小児が病気をしたときに、一番もどかしく、一番むずかしいのが、この“症状を訴えることができない”ということではないでしょうか。医療器具がどんどん進歩していく中でも、この小児科の難しさは古今東西変わらないことではないでしょうか。
医療者ですらこうなのですから、まだ小さいお子さんをお持ちのお母さん、お父さんは本当にたいへんです。熱が出れば大騒ぎ、うんちがゆるくなればまた大騒ぎ、今度は熱、今度は咳と、不安ばかりが心の中を去来していきます。
本書は、そういった小児への不安を解消するのに役立つ一冊になると思います。
本書は赤ちゃんから小児まで、お子さんをお持ちの親御さんに向けた簡易的な一冊ですが、幅広く多くの症状の多くをカバーしており、ポイントがまとめられています。とりあえず一通り読んでおいて、頭の中に入れておくと、何かの時に役に立つのではないでしょうか。
ちなみに本書で扱っている症状で主なものを挙げると、「かぜ」、「熱が出る」、「咳が出る」、「下痢をする」、「お腹いたい」などなど、小児がよく訴える症状ばかりです。小児の症状だけではなく、親御さんが抱く小児の病気への心理状態や、そういった親御さんへのアドバイスなどもある、お薦めの一冊です。
【その他の関連新書】
よくわかる、こどもの医学―小児科医のハッピー・アドバイス (集英社新書)
- 作者: 金子光延
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 新書
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『副作用 その薬が危ない』 大和田潔著 祥伝社新書
タイトルには、“その薬が危ない”というドキッとするような副題がついています。この副題だけ読みますと、“薬ってそんなに怖いのか!”と思ってしまいがちですが、しかし内容は、下手に薬への恐怖感を煽るようなものではありません。むしろ、安全に薬を利用するための上手な付き合い方を記した本といえます。そして記述も、お医者さんと患者様のやりとりを再現したドラマ仕立てのお話や、薬を理解するために必要な病気のメカニズムの解説など、図も入るなどして、一般の方にもわかりやすくなっています。 “副作用のない薬はない”と言われますが、素人では薬の副作用を理解して薬を選ぶことは出来ません。お医者さんが処方してくれたものを飲むしかありません。薬は全て安全である、お医者さんが処方してくれたんだから間違いはないという認識の下に、私たちは薬を飲むわけですが、場合によっては副作用が出る場合もあります。このときに、その副作用について理解をしておかないと、自分の病態には合わないものを長年のみ続けるという不利益を蒙ることになりかねません。お医者さんも神様ではありませんので、その薬によってどのような副作用が起きるのか、患者サイドからしたら、その度ごとに経過を報告することが大切になります。より身体にあったものを処方してもらうためにも、自分の身体と薬の関係がどのような経過を辿っているのか、副作用のリスクと副作用が起きがちな病と薬を、ケーススタディを通しながら理解できる本となっています。
【その他の類似新書】
『「気」で観る人体 経絡とツボのネットワーク』 池上正治著 講談社現代新書
この本では、まず東洋医学独特の概念である「気」というものを、中国文化の中での成り立ち方やその概念を説明し、それが医学にも応用されてきた歴史を考察しています。中国哲学・中国思想は、「気」というものをキーワードにして成立した学問体系ですが、現在は人文科学の分野で扱われています。しかしそれが自然界にも通じ、医学にも応用できるということになると、これは自然科学の分野にも入ってきます。つまり、「気」という学問は、文系、理系というものに分断するものではなく、両者が混在した世界観といえるのではないでしょうか。そういったことを含めた中国医学の「気」という視点で、その気が流れる経絡、気が集まるツボというものを述べたのがこの本です。 この本は、経絡の流注の順番で書いてあるので、とてもまとまった印象を受けます。鍼灸学校に入りますと、経絡経穴概論という授業がありますが、これはひたすら経絡と、その経絡上にあるツボの名前と場所を覚えることに費やされる授業です。ともすると退屈な暗記科目になりがちですが、この書物をそばに置いておきますと、経絡を学ぶことに興味を持つことができるようになると思います。流注順ですので、順番に追っていけるのが本書のよいところです。また新書なので、鍼灸学校の行き帰りの電車の中でも少しずつ開いては読むことができるのではないでしょうか。
【その他の類似新書】
「気」で観る人体-経絡とツボのネットワーク (講談社現代新書)
- 作者: 池上正治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/12/16
- メディア: 新書
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