『医師のつくった「頭のよさ」テスト』 本田真美著 光文社新書
唐突ではありますが、私と嫁さんは、(ちゃんと確認したことはありませんが)人生の方向性や価値観に大きな違いがないであろうと、恐らく自分だけではなく嫁さんも感じていると思います。 自営業という決して安定はしていない私を選んだのですから、きっとそういったところにも理解があって、困ったことがあっても、じゃあどうしようかと同じ目標に向かって進んで行けているのではないかと、のろけではなく、しあわせなことだなと思うわけです。
しかしそんな共同体としての意識があるにもかかわらず、ときどきぶつかることがあります。ぶつかるというか、相手の言っていることがわからないと言いますか、同じ方向を向いているにもかかわらず、なんだか別の方へ向かっているような気分になるときがあるのです。自分の話したことがとっさに理解されず、時折イライラすることがあります。これは自分の一方的な感想ではなく、嫁さんの方も別の場面で同じようなことを感じることがあるようです。
例えば人生の方向性とは別のお話ですが、街を歩いていて、私はよく有名人を見かけます。「あ、あれプルシェンコじゃないか?」と私がいうと、「いや、ただの背の高い外人だよ、いるわけないじゃん。」と嫁さん。そこで検索してみると、どうやらプルシェンコはアイスショー出演のために日本に来日しているということがわかり、嫁さんは騒然として振り返っていく・・・。そんなことが何度もあります。
逆に私は、抽象的な概念を理解したりするのが苦手なところがある。数字も弱い方だと思う。だから、そういった話題になると私の方がうまく理解できなくて腹が立ったりする。私の方は、とりあえずやってみよう、やってみないとわからないから、という感じで遠回りをしたり、せっかく買ったのに部屋のサイズに合わなくて返品したりと言うことがあったりする。
という感じで、同じ価値観を共有しながらも、時々ぎくしゃくしたり、そのぎくしゃくが時々大きな隔たりになることは少なくありません。まだ夫婦なら修正も利きますし、やり直す時間はあります。しかしこれが友達とか、会社内とか言うと、「とことんあいつとは合わないなぁ」と不満が鬱積していきます。そして相手や自分自身を過小評価したり、自信を失ったりしていたたまれない思いに包まれたりもします。
人間には、得手不得手があり、それぞれの長所を伸ばすようにすれば一番いいわけですが、かといって自分の得手不得手はよくわからないことが多いですよね。また何をもってして得意、不得意とするのか、それもわかりません。
本書は、自分の認知のし方がどのようなタイプにあるのかを解説した本です。認知とは、自分の外界をどのように捉えようとしているかという傾向のこと。たとえば目の前の場面を写真のように捉えている人もいれば、言葉で捉えている人もいるわけです。写真のように捉えている人からすれば、言葉で捉えるなんて理解できないでしょうし、その逆もまたあり得るわけです。そういった認知のしかたにタイプがあるために、そこから理解の溝が生まれるところもある、だからこそ自分のタイプを理解し、相手のタイプも尊重する、そういった認知の傾向の違いを認め合うと、お互いを理解しやすくなるというのが本書の趣旨です。
後半は少し惰性になってしまっているところもありましたが、前半部はいろんな認知の違いを理解できます。そこが理解できると、不思議と相手への不満も少なくなり、逆に、自分にはない特徴を知ることもでき、さらにそれを活かしてあげようと思いたくなります。
本書は、家庭内のお互いの相互理解だけではなく、会社内で適材適所の人材活用にも利用できるのではないかと思います。また、こどもが大人に成長する過程で、様々な刺激を受けながら自分の能力を伸ばしていくことも理解でき、その手助けをしているのだという子育てのヒントも得ることができるように思います。
幅広い世代、幅広い職種、幅広い男女にお薦めの新書です。
【その他のお薦めの新書】
医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン (光文社新書)
- 作者: 本田真美
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/06/15
- メディア: 新書
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