『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』 奥田昌子著 講談社ブルーバックス
欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防 (ブルーバックス) | ||||
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健康や医学のニュースのソースを見てみると、欧米発のものがあります。また、いろいろな健康本でも、著者が欧米の人だったりということもあります。最近だと、“シリコンバレー式”とか、“NASA式”など、それっぽい枕詞が付くことが多いように思います。
確かに“人間”という大枠で考えれば、シリコンバレーでもNASAでも良いのかもしれません。シリコンバレーは別としても、NASAなどは科学的な根拠をはじき出してそうですし、それなりに説得力がありそうにも思います。
しかし、実際のところどうなんでしょうか?
例えば食習慣にしても、食べる量が半端なく違いますし、その内容、そして食べる側の体の大きさも違います。参考にはなるかもしれませんが、そのデータを全て鵜呑みにしていいものかと、疑問に思うことが時々ありますよね。
ということで、本書はそんな疑問に答えてくれる一冊です。
本がはじまって内容が各論になる前に、「日本人、こんな健康法は意味がない」というのが第二章にあります。昨今様々な健康法やダイエット、健康食などが出てきていますが、それらの無意味さや効果のなさを、日本人の体質から語っています。その切り方が生理学的であり、とても参考になります。これほどまで日本人の体質というのが特徴として出てくるんだと感心することが多いです。
最近は「糖質抜きダイエット」「糖質制限ダイエット」などがありますが、この第二章には、これが日本人には合っていないお話しがあります。
「糖質制限」を危険視する識者のなかには、「日本人は昔からごはん(お米)を食べてきたから」という、一見すると正統な理由になりそうなお話しを大きな根拠としている方が多いですが、本書は、そういったものとは一線を画していて興味深かったです。
私自身はどちらがいいのかまだはっきりとした答えはありませんが、このお話は糖質と体の関係を考える一つの参考になるのではないかと思います。
第三章からは、多くの人が中高年以降にかかりやすい病気のお話し。糖尿病、高血圧、メタボなどといったものを中心に、そこから波及する脳疾患のお話しなども続きます。これもまた、なるほどと思う箇所が多く、勉強になります。
そして第六章以降はいわゆる「がん」のお話しです。代表的な、胃がん、大腸がん、乳がんを扱って、予防や治療について考察しています。
現在の日本社会では、二人に一人ががんにかかり、三人に一人ががんで亡くなっています。この統計の内容も、様々な理由があるかとは思いますが、有名人の闘病がニュースになるほど、まだまだがんは不治の病の一つに挙げられ、いつか自分も・・・と思うと怖い気がします。いつか根治する治療方法が見つかることを願いつつ、予防に努めたいところです。そういった面からも、本書は一つの参考になると思います。
以上のように、全編に渡って、日本人の体質を理解するのに役立つ内容となっています。
ただし、本書が根拠としているのはあくまで統計(もちろん科学的な見地に立ったエビデンスのあるもの)ですので、全て個別なものにも当てはまるというわけではないのということは頭の片隅に入れておくといいかなとは思います。特に最後の方は羅列のような感じも受けましたので、食傷気味になりました。それでもやはりこうしたデータをこういった視点でまとめて提示してくれているのは、一読の価値があるかなと思います。
本書がいいところは、予防の観点があるところだと思います。巻末の記述にも貝原益軒の『養生訓』の引用がありましたが、著者にはそういった予防の観点もあるのだろうと、全編を通して共感するところが多かったです。
自分が正しいと思っていた知識が、全然違ったと言うことはよくあることです。
しかし、こと体の知識に関してはそういったことがないようにしたいものです。
この本も、その知識を得るための1冊で、健康関係のリテラシーを上げる視点を得られるのではないかと思います。老若男女、多くの方にお薦めの新書です。
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欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防 (ブルーバックス)
- 作者: 奥田昌子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/12/14
- メディア: 新書
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