『ビックリするほどiPS細胞がわかる本』 北条元治著 サイエンス・アイ新書
ビックリするほどiPS細胞がわかる本 ES細胞やiPSといった万能細胞の基礎知識から再生医療の可能性まで (サイエンス・アイ新書) 北條 元治 ソフトバンククリエイティブ 2012-09-20 売り上げランキング : 84718
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山中伸弥博士がノーベル賞を受賞したのは2012年。それ以来、iPS細胞は一般的な用語となり、再生医療、最先端医療の代名詞になりました。iPS細胞に関して、なんとなく細胞が先祖返りをするということくらいしか分っていない方も多いかと思います。しかしテーマが細胞や臓器、身体に関することなので、他のノーベル賞に比べてとても親近感を感じている方も多いのではないでしょうか。
では、実際にiPS細胞とはどんなものなのでしょうか?せっかくなのですから、ここでiPS細胞について知ってみることは悪くないことではないでしょうか?
本書は、iPS細胞を理解する前の段階のお話しが主になります。例えば、そもそも生物とは何か?細胞は何か?そういった根本の理解をしておかないと、いきなりiPS細胞は理解できません。本書は、そのための前知識が豊富に掲載されています。
そして、iPS細胞というものが今後の医療にどのように変えていくのか。iPS細胞がどういったものに応用され、我々人類の病苦を救ってくれようとしているのか。そんなiPS細胞の可能性というものにも言及しています。
ただし、本書はとても初歩的な内容に多くのページを割いているため、肝心のiPS細胞がどのように作られるかといった細かい話しはあまりありません。そのため、細胞や生物についてある程度の知識を持っている方にとっては物足りないと思います。先ずは高校で習った生物のお話しをおさらいする、そんな感じの内容だと思ったら良いかと思います。
これから将来、iPS細胞について学びたい中高生などにもお奨めの分かりやすい新書です。
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ビックリするほどiPS細胞がわかる本 ES細胞やiPSといった万能細胞の基礎知識から再生医療の可能性まで (サイエンス・アイ新書)
- 作者: 北條元治
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2012/09/20
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『脳をその気にさせる錯覚の心理学』 竹内龍人著 角川SSC新書
なぜ、それを好きになるのか?脳をその気にさせる錯覚の心理学 (角川SSC新書) 竹内 龍人 KADOKAWA/角川マガジンズ 2014-03-10 売り上げランキング : 120565
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SMAPの中居正広氏が司会をしている深夜番組、『中居正広のミになる図書館』をたまたまお風呂上がりに見ていたら、目の錯覚の話をしていました。ある絵をしばらくずっと見た後に、色が変わった残像が見えるというもので、それはけっこう意外な驚きでありました。大したことないだろうと思いながら実際にやってみると、すごく色が変わって、こんなにも錯覚って凄いものかとびっくりしたわけです。そして、こういったことを研究している人はどんな人なのだろうと興味を持ち、その時の講師の名前をメモして検索してみたところ、本書が出てきました。
著者の竹内龍人氏は、現在日本女子大学人間社会学部心理学科教授。NTTを経て現職に就いたそうですが、NTTでは錯覚Webサイト『錯視と錯聴を体験!イリュージョンフォーラム』の企画製作に携わるなど、脳の錯覚を得意とする研究者と言うことです。
テレビに出演している竹内氏はとても親しみのある感じでしたが、本書もその印象そのままで、とてもやさしく、親近感があります。難しいことを分かりやすく、しかも嫌味がなく説明してくれるところにまず好感触。こういうところ、けっこう大切ですよね。たとえ話も世代を反映したものが多く、しかもそれがアイドルの話だったりというのがお高くなくていい感じです。
本書の良いところは、あまり欲張っていないところ。そのキーワードは、「少しすきになる」というもの。心理学をビジネスなどに応用したお話しの中には、自己催眠をして億万長者に!といった、とてもハードルの高い上げ上げなものも多い。しかし本書の基調は、「少しだけ」という控え目なもの。その控え目な姿勢だけ見ると、価値のなさそうな本のように思えるが、この「少しだけ」というのが実は大きな効果を発揮するというのだから面白い。
最近よく言われるのは、劇的な出会い方をしたカップルほど別れやすいと言うもの。これは、最初の強烈な好き体験というのはそれほど長く続くものではなく、また、最初の好き体験を超えるものを常に求めてしがいがちになるため、なかなか平凡な日常を乗り越えられないというもの。そのような失敗をするよりは、少しすきになるくらいがちょうど良く、その方が結果として長く好きでいられて、より多くの楽しい時間を過ごすことが出来るだろう、というのが本書の意図であります。
実はこれは何も男女の間柄にだけ限ったものではなく、ビジネスなどにも応用できるものでもあります。ブームのような猛烈な渦を作るのも一つの方法論かもしれませんが、そういったものは結局は長続きせず、そのビジネス自体も数年後にはなくなっている・・・ということも少なくありません。そうなるよりは、地道だけど着実な“少し好き”くらいを狙った方のがいいのかもしれません。特に自営業や中小企業のような経営にとっては、下手なブームで一攫千金を狙うよりも、本書の意図の方が合っているのではと思います。
「錯覚」というと、真っ先にだまし絵、トリックアートのようなものを思い浮かべますが、本書を読んでいると、実はそういった視覚を遊ばせる限定的なものではなく、もっともっと応用範囲が広いことに気がつきます。そしてそれは、人生そのものを豊かにするポテンシャルを秘めているものだと言うことを教えてくれます。語りはやさしい本ですが、その内容はとても深いものがあります。心理学を全く知らない方でも読み進められるので、普段の何気ない行動の心理を知りたい方にもお薦めです。
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『なぜ、アゴの位置を正すと、痛み・歪みが消えるのか? -あなたの身体はアゴで激変する!』 佐藤嘉則著 ワニブックス
なぜ、アゴの位置を正すと、痛み・歪みが消えるのか? - あなたの身体はアゴで激変する! - (ワニブックスPLUS新書) 佐藤 嘉則 ワニブックス 2015-08-22 売り上げランキング : 15491
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肩こりや首のこり、腰痛に悩む人は多いと思います。パソコン作業が労働の中心になり、前屈みになっている人が増えるにつれて、こういった日常の動作の不具合を訴える方も同時に増えているとも言われています。パソコンの作業と肩こりはどのような関係があるのか?
本書は、その原因のひとつとして、アゴの位置を挙げています。本書によりますと、アゴの重さは500グラムと言いますから、思ったよりもかなり重いがぶら下がっているわけであります。そしてそのアゴがつながっている筋肉が重要で、アゴの位置を正しくしていく必要があると言うことです。
本書では、アゴのズレがどのように身体に影響をしているのか、そもそもアゴを中心とした身体の仕組みはどうなっているのか、そういった身体の形態や構造力学を、図を使って分りやすく解説してくれています。そして最後の方ですが、アゴのズレを調整する運動も載っています。
アゴと身体の痛みが関係しているなんて、全く理解できないという方でも、本書を読むとなるほどなと思うところが多数ではないでしょうか。本書に書かれていることは難しいことではなく、日常生活の中で気をつけることが出来ることばかりなので、一読して実践してみてはいかがでしょうか?
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『適当論』 高田純次 ソフトバンク新書
適当論 [ソフトバンク新書] 高田 純次 ソフトバンククリエイティブ 2006-03-16 売り上げランキング : 279702
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テレビで観る高田純次は、本当に適当だ。懐かしの『たけしの元気が出るテレビ』では、毎回変装してはその適当さが前面に出ており、何とも言えないおもしろみを醸し出していました。最近ではその独特のキャラクターが買われてか、地井武男の『ちいさんぽ』、加山雄三の『ゆうゆうさんぽ』を引き継ぎ、『じゅんさんぽ』という散歩番組に抜擢されました。前任者とは全く違うキャラの高田純次が紡ぎ出す『じゅんさんぽ』は、これから期待の番組であります。
ということで、本書は高田純次が書いた本ということで、その適当の源流はどのあたりにあるのかが、ひょっとしたら分るかもしれない。また、その適当っぷりは、果たして素なのか、演技なのか、戦略なのか、そのあたりの本音も分るかもしれない・・・。
と、期待してみたのだが、あまりそのような本ではないかもしれないので、そのあたりをお望みの方には肩すかし、ある意味、適当に流されてしまうだろう。
本書は、最初に精神科医の和田秀樹と対談しながら、心理テストを受けて、その結果を和田秀樹が評価するという章があり、続く章では、またもや和田秀樹が高田純次のこれまでの発言をポジティブに(ずいぶん強引な感じもするけれど)解釈するという、本書の半分は和田秀樹の執筆のようなところも適当です。さらにその後は、高田純次が過去に出した本からの抜粋を元に、それをまた誰かが解説をするという感じで、結局高田純次が語っているのは本書の最後の章で、軽く半生を振り返るくらいのもの。トータルで高田純次が携わっているのは全体の4分の1くらいといった感じか・・・。それを適当とポジティブに取るか、時間の無駄と取るかは読者の価値観によるしかない・・・。
正直、人生を学ぶ本ではありません。生き方を学ぶような本ではありません。肩ひじ張らずに適当に眺めるくらいの本と思います。強いてあげれば、お笑いを目指す人には少しは実践的な役に立つのかな・・・とは思います。
『上達の技術 一直線にうまくなるための極意』 児玉光雄著 SBサイエンス・アイ新書
上達の技術 一直線にうまくなるための極意 (サイエンス・アイ新書) 児玉 光雄 ソフトバンククリエイティブ 2011-04-20 売り上げランキング : 17927
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本書は、主にスポーツの技術向上について解説したもの。
スポーツは、一つの動きだけではなく、身体の様々な動きや機能が連動して行われる。一般的には「運動神経」などと一括して言われたりするが、それほど単純ではない。もともと様々な作用が連携して営まれているのが私たちの身体である、スポーツともなると、それはとても複雑になる。どうせやるならうまくなりたい、うまくなりたいなら、運動や動作の連携がどういったものかを理解しておく必要がある。
本書では、脳と身体の連携のお話しからはじまり、上達することにこだわって解説しています。練習の仕方、記憶のメカニズムなど、単に運動だけではなく、身体の様々な機能についての解説と、それを効果的に向上していく方法論を提案しています。
かつては根性論で語ることが多かったスポーツ。気合いで乗り切れるとかはちょっと古い。また、感性や感覚だけで指導することが多かったスポーツですが、それでは同じ感性を共有するものしか理解されなく、指導者としては弱い。そこで本書のような、科学的アプローチを理解し、少しでもスポーツの向上が出来る練習が大事ではないでしょうか。
スポーツを愛する人、スポーツをしている人、選手を指導する人などはもちろんのこと、本書の内容はビジネスにも使えることが多いので、様々なことを向上したい方にお薦めの新書です。
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『ネコを撮る』 岩合光昭 朝日新書33
ネコを撮る (朝日新書 33) 岩合 光昭 朝日新聞社 2007-03-13 売り上げランキング : 190121
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外を歩いていているとノラ猫に遭遇する。友達のうちに遊びに行くと、そこにネコがいる。ネコという動物を見ると、その動きやフォルムに魅了されてついついカメラを向けたくなる。しかしなかなかうまく撮れなかったりするのが残念です。
本書のタイトルは、『ネコを撮る』。
文字通り、ネコを撮るためのマニュアル・・・と言いたいところなのだけれど、しかし本書には、絞りがどうとか、ホワイトバランスがどうとか、そういうカメラの操作の仕方に関するお話しはありません。たぶんそれだと、ただのカメラの操作本になってしまうし、そういった本は趣味コーナーにあるカメラ本で十分だ。
そこでやはりここは、動物写真家であり、ネコ写真の第一人者である岩合さんの本であるからして、そんなカメラの使い方と言ったつまらないお話しではありません。ところどころ挿入されている写真の欄外に、望遠レンズを使うとか、広角レンズを使うとか、いくつかあるにはあるけれど、ほんのちょっとしかありません。あくまでメインは、ネコの写真を撮るための作法のようなもの。例えば朝早く出かけようとか、動きをよく観察しようとか、そうったアドバイス。しかしそのアドバイスも早々に切り上げて、各国のネコ事情や、ライオンやチーターと言ったネコ科の動物の特徴が述べられていき、“ネコ写真”からは遠くなっていく・・・。
普通であればここでタイトルと中身が違うではないかと文句の一つも言いたくなるのだが、しかしここは被写体がネコであるし、木訥とした岩合さんの語りでもあるし、そんな文句は一つも出てこないのが不思議。
岩合さんのネコに対するやさしい視点。そして、ネコの世界に溶け込んで写真を撮ることこそが、ネコ写真の秘訣であることを知る一冊。ところどころに挿入されるネコ写真もおもしろく、あっという間に読み切ることが出来ますので、頭を働かせずにのんびり活字に浸りたい時にもおすすめです。
『コレステロールに薬はいらない!』 浜六郎著 角川oneテーマ21
コレステロールに薬はいらない! (角川oneテーマ21) 浜 六郎 角川書店 2006-09 売り上げランキング : 303517
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健康管理のために、身体検査をしている人は少なくない。会社員は義務になっているので、当然のことと思ってやっている人も多い。そしてその評価がAとかBとかで、一喜一憂するのが常で、終わってしまったら再びビールをがぶ飲みなんて人もいるだろう。
ここまで一般化している検査であるが、それはどこまで有効なのだろう?中でも高血圧やコレステロールなどは検査値の基準が改定されることもしばしばで、それによって今まで大丈夫だった人が「病気」にされてしまうこともある。これは何とも理不尽なことである。そしてさらに疑問が生じるのは、本書のように、コレステロールが必ずしも悪者ではないという話があることだ。
コレステロールが悪なのかそうではないのか、そういった疑問があるのは、まだまだ未開なことが多い身体の問題だから許せるとしても、それを下げて健康を維持するためのはずの薬が、実は身体を壊しているかもしれないというのだ。もしそれが本当だとしたら、我々は何を信じて、誰を信じて良いのだろうか?
本書は、コレステロールの薬について詳しく検証したもの。様々な角度から検討しているので、とても参考になります。2006年が初版なので、その後の新たな治験などでこの本の内容も古くなる可能性がありますが、薬全般への考え方を変えるためにも読んでみてはいかがでしょうか。そして、薬に頼らない健康作りと言うことも、これを機会に考えてみてはいかがでしょうか。
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