『察知力』 中村俊輔著 幻冬舎新書
中村俊輔選手というと、サッカーにあまり詳しくない私からすると、ちょっと線が弱い感じがしていました。直ぐに倒されてしまうような。でも、唯一無二のあのフリーキックは、サッカーに詳しくない私から見ても惚れ惚れしてしまいます。
さてその実像はどのようなものなのか・・・。
にわかサッカーファンが、ほぼ知らない人について、ただの印象でここでグダグダいうのは失礼である。
ということで、先ずは一冊読んでみよう。
“キング・カズ”こと、三浦知良選手の『やめないよ (新潮新書)」』が最高に勇気をもらえる一冊だったこともあり、そしてサッカーは人生を象徴するスポーツでもあるから、とにかく読んでみれば、何かを得られるであろう。
ということで、読んでみたわけですが、これがまたすごい良かった!
自分からあえて困難な問題を設け、そしてその問題に飛び込んでいく。
普通なら、壁がやってきたらとにかく萎えるし、とにかく逃げ出す。もしその壁を回避できるならば、そっちの道を進むのが私を含めた凡夫の人間だ。
それほど嫌な壁なのに、あえて飛び込む。
飛び込むばかりではなく場合によってはその平凡な道に飽き飽きして、自ら高い壁をつくってしまうのだ。
壁がやってきたら、避けるのではなく、むしろウェルカムで迎えていく。
三浦知良選手の本もそうだったが、一流というのは、困難なときにこそ力を発揮する存在なのだと分る。
そして自ら困難な道を選択する勇気がある人こそが、一流になる素質があるということなのだろう。
冒頭で私は中村俊輔選手のことを線が細いイメージと書きましたが、読中から全くそのイメージは逆転し、とにかく骨太の勇気の合う人なんだと認識がガラッと変わりました。私は中村俊輔選手のような華々しい活躍はできないけれど、自分は自分なりに、とにかく困難な道を選択しようと思うのであります。そして、いろいろなことを察知し、360度に視野を広げて物事を見ていこうと思うのであります。
【その他お薦めの新書】
『一瞬で体が柔らかくなる動的ストレッチ』 矢部亨著 青春新書インテリジェンス
ストレッチというと、グーッと引っ張って一定程度のところで止るものだという印象があります。
しかし本書が紹介しているストレッチは、“動的”なもの。
グーッと引っ張るだけではなく、動かしながら行うストレッチ。
その効果のほどはいかがなものでしょうか・・・。
【その他にお薦めの新書】
『跳び箱に手をつき骨折する子ども』 柴田輝明著 ポプラ親書
“ひ弱な子どもが増えている”という漠とした感じがあります。
電車に乗れば、姿勢をダラっとした子どもが席に座っていたり、座っているかと思えばスマホでゲームをしていたり。
しかしその一方で、卓球やバドミントン、陸上競技など、東京オリンピックが近いからなのか、以前は日本人が活躍できなかった競技にまで目覚ましい成績を出す選手が出るようになってきました。
一方ではひ弱、一方では国際舞台で活躍する若者。
いったいどちらが日本人の現代を象徴しているのでしょうか?
子どもの体力も、二極化しているのでしょうか?
本書にはセンセーショナルなタイトルが付いており、現代の子どもの体力事情を解説したもの。 そしてその解決策も少し明示してあります。
将来の日本のためにも、子どもの環境を考えてみたいきっかけになると思います。
【その他のお薦めの新書】
『医師のつくった「頭のよさ」テスト』 本田真美著 光文社新書
唐突ではありますが、私と嫁さんは、(ちゃんと確認したことはありませんが)人生の方向性や価値観に大きな違いがないであろうと、恐らく自分だけではなく嫁さんも感じていると思います。 自営業という決して安定はしていない私を選んだのですから、きっとそういったところにも理解があって、困ったことがあっても、じゃあどうしようかと同じ目標に向かって進んで行けているのではないかと、のろけではなく、しあわせなことだなと思うわけです。
しかしそんな共同体としての意識があるにもかかわらず、ときどきぶつかることがあります。ぶつかるというか、相手の言っていることがわからないと言いますか、同じ方向を向いているにもかかわらず、なんだか別の方へ向かっているような気分になるときがあるのです。自分の話したことがとっさに理解されず、時折イライラすることがあります。これは自分の一方的な感想ではなく、嫁さんの方も別の場面で同じようなことを感じることがあるようです。
例えば人生の方向性とは別のお話ですが、街を歩いていて、私はよく有名人を見かけます。「あ、あれプルシェンコじゃないか?」と私がいうと、「いや、ただの背の高い外人だよ、いるわけないじゃん。」と嫁さん。そこで検索してみると、どうやらプルシェンコはアイスショー出演のために日本に来日しているということがわかり、嫁さんは騒然として振り返っていく・・・。そんなことが何度もあります。
逆に私は、抽象的な概念を理解したりするのが苦手なところがある。数字も弱い方だと思う。だから、そういった話題になると私の方がうまく理解できなくて腹が立ったりする。私の方は、とりあえずやってみよう、やってみないとわからないから、という感じで遠回りをしたり、せっかく買ったのに部屋のサイズに合わなくて返品したりと言うことがあったりする。
という感じで、同じ価値観を共有しながらも、時々ぎくしゃくしたり、そのぎくしゃくが時々大きな隔たりになることは少なくありません。まだ夫婦なら修正も利きますし、やり直す時間はあります。しかしこれが友達とか、会社内とか言うと、「とことんあいつとは合わないなぁ」と不満が鬱積していきます。そして相手や自分自身を過小評価したり、自信を失ったりしていたたまれない思いに包まれたりもします。
人間には、得手不得手があり、それぞれの長所を伸ばすようにすれば一番いいわけですが、かといって自分の得手不得手はよくわからないことが多いですよね。また何をもってして得意、不得意とするのか、それもわかりません。
本書は、自分の認知のし方がどのようなタイプにあるのかを解説した本です。認知とは、自分の外界をどのように捉えようとしているかという傾向のこと。たとえば目の前の場面を写真のように捉えている人もいれば、言葉で捉えている人もいるわけです。写真のように捉えている人からすれば、言葉で捉えるなんて理解できないでしょうし、その逆もまたあり得るわけです。そういった認知のしかたにタイプがあるために、そこから理解の溝が生まれるところもある、だからこそ自分のタイプを理解し、相手のタイプも尊重する、そういった認知の傾向の違いを認め合うと、お互いを理解しやすくなるというのが本書の趣旨です。
後半は少し惰性になってしまっているところもありましたが、前半部はいろんな認知の違いを理解できます。そこが理解できると、不思議と相手への不満も少なくなり、逆に、自分にはない特徴を知ることもでき、さらにそれを活かしてあげようと思いたくなります。
本書は、家庭内のお互いの相互理解だけではなく、会社内で適材適所の人材活用にも利用できるのではないかと思います。また、こどもが大人に成長する過程で、様々な刺激を受けながら自分の能力を伸ばしていくことも理解でき、その手助けをしているのだという子育てのヒントも得ることができるように思います。
幅広い世代、幅広い職種、幅広い男女にお薦めの新書です。
【その他のお薦めの新書】
医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン (光文社新書)
- 作者: 本田真美
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/06/15
- メディア: 新書
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『人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」』 三井誠著 講談社現代新書
鍼灸師として人の身体を診ていると、ほんとうに身体というのは過不足ないものだと感心することが多く、いったい誰がこの「人」というものを作り上げたのだろうと思うことがあります。そして、その進化の道程に思いを馳せると、いろいろなことを想像してワクワクしてきます。
鍼灸師という自分の仕事にとっても、この人類の進化の歴史を解明できたら、もっと良い治療に結びつくのではないかと思ったりもして、それがためにさらにワクワクしながらこういった人類史の本を読んでしまいます。
本書は、主に人類がどのようにして人類という種に辿り着いてきたのかという道のりを中心に語られています。
こういった人類史の本でありがちなのは、ややこしいカタカナの人類の名前が次から次へと出てくること。もちろんそれは学問的に大切なことで、そういった細かい情報を求めている方もいるでしょうから、それはそれで必要なことかも知れません。しかし、私のような、直接人類史そのものを専攻にしていない者にとっては、それほど重要なものではなく、出来たらサラッと流していきたいところです。本書はその案配がとてもほどよく、一般の人が手にとっても無理なく読み進めることが出来るのがすごいところ。
本書によると、700万年前に、はじめて人類と呼べるような萌芽が産まれたそうなのですが、その後は紆余曲折、相当の時間をかけて進化の道を歩んでいき、そして現生人類となってからは、それまでとは打って変わって急激な(といっても地球の長い歴史から見ての尺度であって、何万年という年月が必要であったことはわけですが)進歩をとげていく。そして日本でいえば、縄文時代のような、痕跡が残っている、手に届きそうな時代になったという・・・その変化の仕方がまた読んでいて楽しいです。
700万年という長い年月を、この新書という1冊にまとめるというのは至難の業であると思いますが、単なる形態の変化だけではなく、精神文化の面からの進化の足跡もある程度はカバーしているのも面白く読むことが出来ます。
そして、日本人のルーツについても一つの章を作り、さらに、人類史が今現在どういった手法を用いて人類進化の謎を解き明かそうとしているのかといった技術的なお話しもあって、それはそれでまた興味深く読むことが出来ます。
2005年に刊行された本なので、その後の新しい発見や発掘によって、本書の内容が変わってきている可能性もありますが、それはそれとしても、これほどまでにコンパクトに、そしてときにユーモアを交えて読むことが出来るのは貴重な一冊ではないかと思います。人類の進化、人類史に興味のある方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」 (講談社現代新書)
- 作者: 三井誠
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/01/22
- メディア: Kindle版
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『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』 奥田昌子著 講談社ブルーバックス
欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防 (ブルーバックス) | ||||
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健康や医学のニュースのソースを見てみると、欧米発のものがあります。また、いろいろな健康本でも、著者が欧米の人だったりということもあります。最近だと、“シリコンバレー式”とか、“NASA式”など、それっぽい枕詞が付くことが多いように思います。
確かに“人間”という大枠で考えれば、シリコンバレーでもNASAでも良いのかもしれません。シリコンバレーは別としても、NASAなどは科学的な根拠をはじき出してそうですし、それなりに説得力がありそうにも思います。
しかし、実際のところどうなんでしょうか?
例えば食習慣にしても、食べる量が半端なく違いますし、その内容、そして食べる側の体の大きさも違います。参考にはなるかもしれませんが、そのデータを全て鵜呑みにしていいものかと、疑問に思うことが時々ありますよね。
ということで、本書はそんな疑問に答えてくれる一冊です。
本がはじまって内容が各論になる前に、「日本人、こんな健康法は意味がない」というのが第二章にあります。昨今様々な健康法やダイエット、健康食などが出てきていますが、それらの無意味さや効果のなさを、日本人の体質から語っています。その切り方が生理学的であり、とても参考になります。これほどまで日本人の体質というのが特徴として出てくるんだと感心することが多いです。
最近は「糖質抜きダイエット」「糖質制限ダイエット」などがありますが、この第二章には、これが日本人には合っていないお話しがあります。
「糖質制限」を危険視する識者のなかには、「日本人は昔からごはん(お米)を食べてきたから」という、一見すると正統な理由になりそうなお話しを大きな根拠としている方が多いですが、本書は、そういったものとは一線を画していて興味深かったです。
私自身はどちらがいいのかまだはっきりとした答えはありませんが、このお話は糖質と体の関係を考える一つの参考になるのではないかと思います。
第三章からは、多くの人が中高年以降にかかりやすい病気のお話し。糖尿病、高血圧、メタボなどといったものを中心に、そこから波及する脳疾患のお話しなども続きます。これもまた、なるほどと思う箇所が多く、勉強になります。
そして第六章以降はいわゆる「がん」のお話しです。代表的な、胃がん、大腸がん、乳がんを扱って、予防や治療について考察しています。
現在の日本社会では、二人に一人ががんにかかり、三人に一人ががんで亡くなっています。この統計の内容も、様々な理由があるかとは思いますが、有名人の闘病がニュースになるほど、まだまだがんは不治の病の一つに挙げられ、いつか自分も・・・と思うと怖い気がします。いつか根治する治療方法が見つかることを願いつつ、予防に努めたいところです。そういった面からも、本書は一つの参考になると思います。
以上のように、全編に渡って、日本人の体質を理解するのに役立つ内容となっています。
ただし、本書が根拠としているのはあくまで統計(もちろん科学的な見地に立ったエビデンスのあるもの)ですので、全て個別なものにも当てはまるというわけではないのということは頭の片隅に入れておくといいかなとは思います。特に最後の方は羅列のような感じも受けましたので、食傷気味になりました。それでもやはりこうしたデータをこういった視点でまとめて提示してくれているのは、一読の価値があるかなと思います。
本書がいいところは、予防の観点があるところだと思います。巻末の記述にも貝原益軒の『養生訓』の引用がありましたが、著者にはそういった予防の観点もあるのだろうと、全編を通して共感するところが多かったです。
自分が正しいと思っていた知識が、全然違ったと言うことはよくあることです。
しかし、こと体の知識に関してはそういったことがないようにしたいものです。
この本も、その知識を得るための1冊で、健康関係のリテラシーを上げる視点を得られるのではないかと思います。老若男女、多くの方にお薦めの新書です。
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欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防 (ブルーバックス)
- 作者: 奥田昌子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/12/14
- メディア: 新書
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『わたしが正義について語るなら』 やなせたかし著 ポプラ社
小さい子達は、みんなアンパンマンが大好きです。キャラクターを見るだけで飛びつきます。
しかしその一方で、結局のところアンパンマンだって暴力的なシーンがあるじゃないかと、(少数だとは思いますが)自分の子供にはアンパンマンを見せないという方もおります。それも一つの意見だと思いますし、そう思ってみると確かにそんなところを感じなくもありません。
のんびりしたあのアンパンマンの世界観。しかしアンパンマンとばいきんまんとの抗争は、いったい何を伝えようとしているのか、そして正義というものをどう表現しようとしていたいのか。作者であるやなせたかし氏が、どのような思いでアンパンマンを誕生させ、どのような願いを以てこの物語を描き続けてきたのだろうか。
本書の最初の出だしは、ゆるく正義についての語り。アンパンマンに登場するメインキャラの役割を語ったり、やなせ氏が若い頃に見たフランケンシュタインのお話など、正義についてやさしく紡ぎ出します。
しかしその正義の話は決して堅苦しいものでもないし、押しつけがましくもない。時には厳しい現実のお話しも含めて、やなせたかし氏自身もまだまだ模索し、模索しながらも絵本作家としての希望も持ちつつという感じがよく分ります。
もっともらしく「これが正義だ!」と定義づけることはかえって胡散臭く、危険な香りがするものですが、やなせたかし氏も戦争の前後で正義がガラッと変わってしまった現実を見てきたこともあるのだろうと思います。
出だしが少し済んだところで、やなせたかし氏の生い立ちや売れっ子漫画家になるまでの道のりを語っていきます。本書のタイトルにある「正義」とは全く無縁のお話にはなりますが、やなせたかし氏が歩んできた道のりは、さまざまな縁が折り重なりながら導き出されたものだと分かり、ある意味それは、一人では決して成り立たない物語を紡ぎ出す原動力なのかなと思ったりと、興味深いところもあります。かの名曲、『手のひらを太陽に』の誕生秘話も見逃せません。
やなせたかし氏の歩みが終わったあとは、ダーッと一気に正義や未来についての語りが続きます。時にやさしく、時に厳しく。そしていつのまにやら正義の話というよりは、人生そのもののお話しへ。
一見するとアンパンマンはほのぼの、弱々しい感じにも見えるヒーローでありますが、その芯は骨太。そのアンパンマンの根っこに触れることが出来るならば、また、触れてほしいと願っているのであれば、アンパンマンはとてもお子さんにとって勇気を教えてくれる物語になるのではないかと確信を持てました。
本書の最後には、あの名曲であるアンパンマンの主題歌が記されています。それを目を追って読んでいくと、いつの間にか目頭が熱くなっている自分に気がつくのであります。
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